「かわいいお店ですね。」
谷根千探索・物件探しで歩く中、目につくお店には片っ端から入っていて、店主さんやお店の方に、こういう切り出しでお話を伺っている。
谷中・根津・千駄木界隈にはほんとに「かわいいお店」がいっぱいある。
小さいから思うのではなく(笑)女性の方が好きな町並みだからでしょうか?
アートギャラリー・ハンドメイドのお洋服やさん・異国の雑貨小物・骨董アンティーク・カフェ…
色んな方が色んな想いで強い自己主張をしているわけではないのだが自然な輝きを放っているお店が実に多い。
女性向け?なお店も多い中、最近はひみつのアッコちゃんにご同行願うまでもなく、「かわいいお店」を見つけてしまうと一人でも入ってしまう。
結構お店の中での回遊時間が長く、あちこち見てしまうので{何この人…}的な目線を感じるのは汗をかくので「谷根千でかき氷のお店を開きたくて…」と冷ややかな目線対策を取りながら…
たいていのお店の方は親切で。そんな話の中でもこれからお店をやりたい僕にとって、繁忙時期やお客さん層などお聞きできるのは勉強になるのだが、すごく楽しいのが商売としてお金を稼ぐ以外に大切にしているお店を始めた「本当の目的」。皆さん三者三様で聞いていると実に面白いし先輩方のお話を聞けるのは本当にありがたい。
散策しているとなぜか足が向いてしまう「谷中銀座」。
静寂な中に突如現れる、賑やかな商店街、頭の中の切り替わりが実に楽しい。
「ん?」
{見慣れぬ建物…}
「外国人案内所?」
{そっか…成田から一本だし、外国からのツーリスト御用達 澤の屋旅館さんもあったしな…}
入ってみると
にこやかな金髪の男性スタッフが一人。
あれこれと話かける。
「……アーわたしニホンゴあまりワカリマセン、すこしゆっくり???」
「そうりぃそうりぃ」
中学英単語を並べ会話をつなぐ。
フランス人だという事がわかる。
「おーブルゴーニュ出身?おーわ・た・しWINE大すき、ワイン ライクライク」
{中学生落第…}
「ワインだめです…」
「チーズ?」
「スキです!スキです」(やっと顔輝く)
そうこうしてるうち自転車かごに野菜満載の下町のおばさま登場。
僕のやり取り見ていられなくなったのか、はたまた{それ以上日本人の恥をさらすな!}と思ったのか、突然「ペラペーラっペラペーラっ!」と流暢な英語での会話。
「……すごいですね。」
「いや私、海外旅行が好きなものですから、ほんの少し英会話を習っておりまして。」
やっぱり英語しゃべれるってすごいんだな。普段外国語というもの全く縁のない生活を送っている僕にはプチカルチャーショック。そこからおば様のお話や僕が質問したいことを通訳してくださって三人の会話に花が咲いた。
「あれっ!歌舞伎ですかぁ?あっこの人知ってます!実は僕以前に歌舞伎俳優をしておりまして、この人、この外国の方に化粧している人 その時の後輩でした!そうそう海外公演の時のホテルが相部屋でした!」
壁面一面に文化交流での写真が貼ってあり、その中の数枚に以前歌舞伎門弟時代の後輩だった彼の写真があった。
出世したんだなぁ…
世襲世界の歌舞伎界、以前の僕を含め門弟まではなかなか光が当たらない。
かつて歌舞伎座の三階大部屋で過ごした仲間が脚光を浴びている姿をうれしく思った。
途中でよそから戻って話を聞いていた所長さんが「彼、先日の羽田空港杮落としでやってましたよ、歌舞伎」と彼の活躍を教えてくれた。所長さんとの話の中で「かき氷屋を開く予定です。」と言って夏の墓参りのついでに行った京都・南座裏の文房具店(歌舞伎俳優・舞妓さん御用達)にて奮発して作ってもらった「ひみつ堂」の千社札を名刺がわりに渡すと、抜群の笑顔でその役者さんが活躍する写真の横に千社札を貼ってくれた。
観光案内所『YANESEN』のホームページを開くと「文化体験を通して、日本人の礼儀正しさや美意識・伝統文化の精神を伝えていけたら良いと思います。」とある。
新しく建てられたキレイな建物で一階が展示・案内所、二階が文化交流の教室になるそうです。
所長さんも日本文化としての「かき氷」に興味を示して頂き、「夏にはかき氷、廻しにきますね。」と手をくるくるやり案内所をあとにした。
奥の深い町だなぁ。
物件探しは難航してるけど、ここまで町にご縁があれば(むりやり)、谷根千での出店は必勝祈願!!
「勝ち負け関係ないんですけど……」願わずにはいられません。
「よっこいしょ」
重くなりかけた腰を上げ、今から探しにいきますかぁ。
師匠のマネして
「大願成就は今もくぜぇ~ん」
バタバタバタバタバタバタ…バアァ~タリッ
チンチンチンテンチンツンツンテンテンテレレン……
ちょ~ん!
(歌舞伎好きな方はわかりますよね……少ないかな)(泣)
雪フル 谷根千 某所