生きカエル場所

「みなさんのお蔭で今年も氷が取れました。本当にありがとうございました。」
今年の採氷作業が無事に終わった後、安堵な雰囲気の休憩室で親方さんが採氷に関わった方々に締めの挨拶がありました。何回お手伝いさせて頂いても作業が上達するには程遠く、その場に居合わせた僕にとっては恐縮極まりない出来事だったのですが、改めて感謝を伝えることの大切さを勉強させて頂きました。
初めてお会いした時からいつでもどんなときでもニコニコとして怒ったとこなど見たことない温和なお人柄。しかし氷の仕事となると古希を越える細身の体からと思えないほどエネルギー溢れる圧倒的な体力で憧れます
切り出し中は氷上で大きなカッターを軽々と自在に操り氷をきっておられるのですが最後は皆と氷に大量のおが屑で蓋をする作業に。
切り出しの時だけしか行かない僕でも「氷に蓋をする」作業は何か達成感というか込み上げてくるものがあるのですが、自然を相手に現代の進化からかけ離れた大変な仕事を代々受け継ぎ守ってきた親方さん、女将さん、ご子息の方々の安堵と思いは計り知れないものがあるんだろうなぁと思うとなんだか泣きそうになりました。
思えば谷中のお店が開店する前にかき氷界の巨匠である「埜庵」さんにご紹介頂き初めて参加させて頂いてから5年。三ツ星氷室さんの氷池は自分にとって初心に帰れる大切な場所でもあります。肉体的に本当に大変な作業の連続ですが、採氷に関われることによって大きなエネルギーをもらえることも確かです。自分のお店に戻ると実感します。
「かき氷だけで生きてゆく」
なんとも無謀なことを初められた「埜庵」の店主さん、氷を繊細に削ることでは右に出るものはいないであろう「三日月氷菓店」の店主さんとご一緒できることも毎年気が引き締まるし、そんな「かき氷だけで生きてゆく」ことの先頭を走り続ける店主さん、各お店のスタッフさんから色々な話を聞ける刺激は夏の前には怖気づく自分の心にムチを打ってくれます。先輩の想いを感じながら《三番目》として自然の恵みに感謝し責任の重みを受け止め三ツ星さん愛情の塊である氷をお客さまにお届けしたいと思っています。
また一方で通年でかき氷を提供されるお店が増え色々なところで魅力溢れるかき氷を目にする機会も多くなりました。ただ「ふわふわ」とか「自家製蜜」とかいう枠を越えて幅広くなってきていることは「かき氷」に携わるものとしてとても素晴らしいことだと思います。
そんな中
「ひみつ堂」としてできることはこれからも「世界で1つしかないひみつ堂を作っていく」今までやってきたひみつらしさを大切にしながら「ひみつ堂に来た全ての人に笑顔になってもらう」ことを不可能!と思わず常の目標に置きつつ今年も夏に向けて励んでいきたい思います。
もう一つ
続けていけるのは至らない店主を支えてくれるスタッフがいてくれてこそ。親方さんのように感謝を伝えられる人になれるようになりたいと思います。
日光の天然氷が自然の寒さでゆっくり固まるように時間をかけて(笑)
生きカエル場所で
尊敬できる人達達に再会して
初心を見つめ直せることにつくづく感謝して。

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by omodakaya-ice
| 2015-02-12 20:03
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